【その3】「ちかい」と「おきて」

私は、名誉にかけて、次の3条の実行を誓います。
1.神(仏)と国とに誠を尽くし、おきてを守ります。
2.いつも他の人々を助けます。
3.からだを強くし、心をすこやかに、徳を養います。


ちかい

誓いを立てるスカウト

 上に記したのは、皆様もよくご存知のスカウトの「ちかい」です。「ちかい」の文章表現は、時代や国によって若干の変遷が見られますが、その主旨は、B-P卿がボーイスカウト運動を創始された時から一貫しています。

 B-P卿は、少年たちがよりよき社会人となって、「真に幸福な人生」を送ることが出来るようにと、社会教育運動としてのスカウティングを提唱されました。「よりよき社会人」とは、一人の人間として誰からも信頼される存在であり、その「信頼」は、丈夫な身体と誠実で豊かな人間性を持ち、さまざまな技能によって他の人々のお役に立つことを実践して、初めて得られるものです。B-P卿は「他者から信頼されることがスカウトの名誉」であると説かれ、スカウトたちに次の「三つのつとめ」の実行によって信頼される人となることを教えられました。

「神へのつとめ」=「恐れ」と「尊敬」を知り、「感謝」の心を持って豊かな人間性を育む。
「他の人々へのつとめ」=自己の欲求にのみ従うのではなく、社会の一員として他の人々を助けることで社会への責任を果たす。
「自己へのつとめ」=「神へのつとめ」「他の人々へのつとめ」を果たすには、先ず正しい心と丈夫な体を養い、知識や技能を身につけなければならない。
 現在、私たちが立てている「ちかい」も、この「三つのつとめ」を原点にしていることはいうまでもありません。

 さて、スカウトが「ちかい」を立てるのは一生に一回のみ、ボーイ隊に上進(入隊)する時です。そして、「ちかい」はご両親や隊長や団に対して立てるものではありません。「私は、名誉にかけて…ちかいます」と前文で唱える通り、スカウトが「自分自身の名誉」にかけて「自分に対して」約束するものなのです。「ちかい」を立てたその瞬間からは、いつでも・どこにいても・どのような姿であっても、世界中の仲間とつながる「スカウト」になります。それゆえに「ちかいを立てた日」は、とても大切な、忘れてはならない日とされるのです。

 「おきて」は「ちかい」の中で遵守することを表明した、スカウトの具体的な生活規範といえます。一般に少年たちは学生から社会人として成長する過程で、さまざまな規範や規則を守ることを求められます。その多くが「~でなければならない」あるいは「~してはならない」などの「規制・禁止型」の決まりごとであるのに対して、「おきて」は「誠実である」「感謝の心をもつ」のように、「自分は~です」という「宣言型」の規範であることに大きな特徴があります。決まりを強制されて守るのではなく、自分の意志によって自分のあるべき姿を明らかにするという姿勢が、「おきて」には表われています。このことは当然「ちかい」にも共通しています。

 「ちかい」と「おきて」の主旨を理解するには、いささか年齢が幼いビーバーやカブのスカウトのために、「ちかい」「おきて」に代わるものとして、ビーバー「やくそく」「きまり」カブ「やくそく」「さだめ」があります。表現こそやさしく書かれていますが、これらもやはり「ぼくは~です。」という「宣言型」で統一されています。

  「ちかい」も「おきて」も、共にその実践・実行を重視します。どんなに立派な信条や規範であっても、実行を伴わなければ価値はありません。スカウトは「ちかい」と「おきて」に記されたそれぞれの項目を、人間として生きてゆくためにとても大切な事柄であると理解すると同時に、たとえ一日に一つでもよいから、具体的な行動を通じて実践・実行することを目指します。それは、スカウトのスローガンである「日日の善行」にも通じるわけです。

「君は『ちかい』と『おきて』の実践にどのように努めていますか?」
 ボーイスカウトの2級章から、ベンチャー富士章に至るまで、スカウトたちはその進級の都度、面接会でこの質問を必ず受けます。

 人間は年齢を重ねるほど、その精神性を成長させるといいますが、私は、スカウト仲間の中で一番素直に「やくそく」や「きまり」を実行しているのは、ビーバースカウトで、逆に、最も「ちかい」「おきて」に縁遠い日常を送りがちなのが、「ユニフォームを着ていない時」の成人かも知れないと考えています。私たち成人が、日常生活の中で「ちかい」と「おきて」を実践して、「よりよき社会人」としての「お手本」を示すことにもう少し真剣に努めていれば、スカウトたちの目に映る「実社会」はもっと明るく、あたたかなものになっているはずと、スカウトの進級面接に立ち会うたびに反省することを繰り返しています。

(GL:たいま)
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