【その9】スカウトは傘をささない

 スカウトたちが野外で活動する時、日本の風土・気候を考えれば「雨降り」は避けられないものといえます。特に鎌倉5団の場合「30周年記念キャンプ」で実証された通り、私が折り紙つきの「雨男」ですから、本団のスカウトたちには雨に降られることを常に覚悟してもらわなくてはなりません(笑)。

 さて、スカウト活動に使用する雨具の中に「傘」はありません。これは野外で行動する時に「両手」を常に空けておくためです。

 雨具は、上下が分かれた「セパレート式」のものが行動しやすいのですが、そのままでは荷物を濡らしてしまいます。別にザック用の雨カバーを準備するなど、ザックそのものを防水する必要があります。それでも荷物が濡れる可能性は残るので、内容物を防水加工したり、ビニール袋などに入れるなどの細心の工夫をします。

 「ポンチョ」という一枚もののシートは、頭から荷物ごと被る形の雨具ですが、風に弱く下半身が濡れやすいのが難点です。「ポンチョ」を使う時には、下半身だけセパレートの雨具を着てしまうという方法もあります。

 こんな苦労をしなくても大きな「傘」を使えば、横風でも吹いていない限り、体も荷物も濡れないのですが、それでもスカウトが活動中に「傘」をさすことはありません。(ただし、バスや電車を利用する時など、一般の方たちに「迷惑」が掛かることを避けるため、折りたたみ傘などを携行して適宜使用することはあります)

 雨具を含めて、スカウトには「集会用具」と云われる「基本装備」があります。まだ体の小さいビーバースカウトは、楽しい活動に必要な身の回りのもの最小限だけですが、カブ隊・ボーイ隊と進むにつれてロープやナイフ、救急用具や手旗など徐々に種類と量が増えます。しかし、通常の集会で、その全てを使用することはまずありません。その集会ごとに必要なものだけをザックに入れて行けば、荷物も軽くなるわけですが、スカウトたちどのような集会でも、基本的には隊で定められた集会用具を全て背負って集まります。(「富士登山」のような特化されたプログラムでは、必要最小限の装備に絞り込む場合もあります)

 また、集会用具や、キャンプの個人装備を背負う時には、全てのものを一つのザックの中に収めるように指導されます。学校遠足のスタイルのように水筒を肩掛けにすることもありません。これは、木の枝や岩などの障害物に紐などを引っ掛けないためであり、個人の装備が一つにまとまっていることで、緊急の時に迅速な行動がとれるよう、常に身の回りを整理しておくことにも繋がります。

 「傘」をささないことも、集会用具をいつも一つにまとめて背負っていることも、普通に町の中で生活するには必要のないことですが、スカウト活動の「教場」は「野外」であり、スカウトのモットー「そなえよつねに」の気構えと実践が、その姿の中には息づいているのです。

(GL:たいま)

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